定期接種に指定されているワクチンながらも、厚労省が積極的な推奨をしないという方針を打ち出したため、大きく接種率が下がってしまっているのが「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」です。
HPVは、子宮頸がんの原因となるウイルスであり、HPVワクチンを接種することで、子宮頸がんのリスクを大幅に下げることが出来ます。子宮頸がんはワクチンで防げる数少ないがんなのです。
日本では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんに罹患し、約3千人が死亡しています。またこれまでは40~50代が罹患のピークだったものが、20~30代の若い女性にも増えてきており、患者数、死亡者数も増加傾向にあります。接種率の低下が、如実に悪い方向へ出てしまっているのです。
HPVは元々人間の体にはいないウイルスで、基本的に性交渉で感染することが多いです。最初の性交渉で感染することがあるため、その前にワクチンを接種しておく必要があります。
現在日本で流通しているワクチンは4価ですが、既に世界の流れは9価ワクチンであり、日本でも先日9価の製造承認が下りていますので、もうしばらくすれば9価ワクチンが出回るのではないかと思っています。
日本では定期接種は女性のみで、12歳から16歳の3月31日までが定期接種の期間に指定されています。もしまだ期間に猶予があるようでしたら、少し待って9価を接種した方が良いかもしれません。
ちなみにアメリカでは、HPVワクチンは女性だけではなく、男性も定期接種になっています。男性も接種しておけば、それだけ女性への感染リスクも下がるわけですから、本来は男性も接種すべきです。そもそもHPVは子宮頸がんの原因となりますが、それ以外の外性器周辺にできる疾患も引き起こします。
代表的なものに「尖圭コンジローマ」がありますし、陰茎がん、オーラルセックスをした場合は、咽頭がんの原因にもなります。
感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、感染してしまった後は取り除くことは難しいため、基本的にはワクチンで予防するしかないウイルスです。(※ただし感染しても自然と体内から排出されることもあるため、必ずしもすべての人に、ウイルスが体内にとどまり続けるわけではありません。)
長くなってしまったのでこのへんで。次回はHPVワクチンの安全性について書いてみたいと思います。
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