月別アーカイブ: 2018年4月

アレルギー科の実情とアレルギー専門医 その2

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前回に引き続きアレルギー科とアレルギー専門医についてのお話です。

例えば子供の食物アレルギーを例に挙げてみましょう。海外で食物アレルギーが多い食材に「ピーナッツ」があります。ピーナッツバターを多く摂る習慣のある海外では、子供のピーナッツアレルギーは大きな問題となっています。そういった国の中で、イギリスはピーナッツバターを食べさせる時期を遅くしている、対してイスラエルでは、かなり早い時期からピーナッツバターを食べさせています。では、どちらがピーナッツアレルギーの患者数が多いかというとイギリスなのです。

少し前までは、幼いうちはなるべくアレルゲンに触れさせないというのが当たり前の考えでした。今もそういう風に考えてらっしゃる親御さんは多いと思います。しかし、現在では、アレルゲンに触れなさ過ぎるのもダメという考え方が主流になりつつあります。

アレルギーというのは、体に害を与えない物質に対しても、体内の免疫が有害と判断して反応してしまう免疫の過剰反応です。そのため年齢を重ね、免疫機能がある程度発達してからアレルゲンとなる物質に触れると、アレルギー反応が起こりやすいということがわかってきました。

こういった最新の研究を学ばずに、アレルギー検査をして、ただそのアレルゲンに触れないようにしてくださいという医師がかなりの数いるということが大きな問題になっているのです。アレルギーは、子供の生活の質や、健康的な発育にも関係してくる重大な問題です。どのようにアレルギー症状を和らげるのか、患者さんの生活をどういう風に改善できるのかを示してあげるのが医師の仕事だと、はらこどもクリニックでは考えています。

アレルギー疾患に対する治療については、最新の研究に基づいた治療法のガイドラインと実際の現場での治療実態の間に、非常に大きなギャップがあることが問題になっている領域です。今まで根拠もなく当たり前に行われていた治療のイメージが強すぎて、患者さんだけではなく、医師さえもそれに囚われてしまっているのでしょう。はらこどもクリニックでは、アレルギーに対する正しい医療知識をきちんと普及していきたいと考えています。

お子さんのアレルギーでお悩みの親御さんは非常に多いと思います。いつでもお気軽にご相談ください。

 

所沢市の小児科 はらこどもクリニック

〒359-1141 埼玉県所沢市小手指町2-1379
診療時間 午前 8:40〜12:00  午後 15:00〜18:00
受付時間 平日 8:30〜18:00  土曜日 8:30〜12:00
休診日 日曜日 祝日 (年末年始 お盆休みあり)

アレルギー科の実情とアレルギー専門医 その1

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例えば、「アレルギー科」の看板がかかっていたら、患者さんはアレルギーに詳しい先生がいると判断するのが普通だと思います。しかし、日本では、アレルギー科を標榜するのに特に規則や制限はありません。極端なことを言えば、医師免許を持っていれば、誰でもアレルギー科を標榜して構わないのです。

現在日本では、アレルギー疾患をもつ患者さんが年々増加しつつあり、現在では2人に1人の割合で何らかのアレルギーを持っているといわれています。その中でアレルギーに対する研究が進み、治療法も進歩しています。しかし、最新の知識や研究の成果を勉強せずに、一昔前の治療法方や治療に対する考え方のままに間違った治療をしている医療機関が多くなっていることが、医療界で問題になっています

みなさんは専門医制度というのをご存知でしょうか?医療といっても様々な分野・専門科がある中で、それぞれの専門領域で、その領域の専門研修を受け、患者さんから信頼される標準的な医療を提供できる医師=「専門医」とされています。簡単に言ってしまうと、この「専門医」の資格があるかどうかで、患者さんが何かの病気で病院にかかるときのわかりやすい判断基準にしてもらおうということです。今の医療界では、この専門医制度を活用する方向に舵が切られています。

専門医のひとつに「アレルギー専門医」があります。アレルギー専門医の数は全国的に見ても少なく、小児科でアレルギー専門医の資格を持つのは1000人程度となっています。所沢市に限れば数人、開業小児科に限れば、本クリニック副院長の原拓麿医師ひとりというのが実情です。

(アレルギー専門医についてはこちらをご覧ください。日本アレルギー学会専門医・指導医一覧

結果として、アレルギー科を標榜する医療機関の中で、全国平均で日本アレルギー学会に入っている医師がいるのは52%、専門医の資格を持っているのは、わずか30%にとどまっていることが分かっています。これだけアレルギーの悩む方が増えている中で。アレルギー科を標榜すれば患者さんが多く来るということで標榜している医療機関が少なくないのです。

もちろんアレルギー専門医を持っていなくても、きちんとしたアレルギー治療を行える医師はたくさんいます。特に様々な患者さんを診療され経験を重ねている年配の意思の医師の方には、そういう方が多いと思われます。ただし、年齢的にこれからそういう医師は徐々に減っていくと思われます。

今回は長くなってしまったのでこの辺で。次回もアレルギー科の実情についてお話したいと思います。
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予防医療:予防接種における集団免疫という考え方 その2

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今回も前回に引き続き、予防接種による集団免疫について書いてみたいと思います。

コミュニティが感染症に対する集団免疫を獲得するためには、ワクチンの高い接種率が必要です。しかし、必ずしも老若男女全ての人、そのコミュニティ全体がワクチンを接種しなくても効果は得られます。社会の中のある集団に接種することで、社会全体の罹患率を下げられるのです。前回例に挙げたインフルエンザでは、子供の接種率を高めることで高齢者に効果があるというその典型です。

その他にもHPVワクチンがそれに当たりますHPVワクチンはヒトパピローマウイルスによる感染症を防ぐためのワクチンです。ヒトパピローマウイルスは主に性接触によって感染します。女性の約80%が一生に一度のうちは感染するというよくあるウイルスで、あまり悪さをしないのですが、場合によっては、尖圭コンジローマという感染症(生殖器とその周辺にイボができる)を引き起こしたり、最悪の場合、子宮頸がんを引き起こすことで知られています。

現在日本ではHPVワクチンが積極的な接種の推奨は停止されていますが、アメリカやイギリスでは、子宮頸がんを防ぐための定期接種として、ほとんどの女性が受ける予防接種です。アメリカでは、HPVワクチンを接種したことで、女性の子宮頸がんや尖圭コンジローマだけではなく、男性の尖圭コンジローマも有為に減少しています。

また、ヒトパピローマウイルスは陰茎がんを引き起こす原因にもなっているとも言われているので、もしかしたらそちらにも効果が出ているのかもしれません。また、尖圭コンジローマは母子感染もします。母親が罹患していると生まれた子供の喉にイボができてしまい、それを手術で切除しなければなりません。それを防ぐこともできます。

予防接種の先進国であるアメリカでは、集団免疫の考え方が広く浸透しています。アメリカでは、受けるべき予防接種をきちんと受けていないと、パブリックなコミュニティに参加することはできません。(もちろん、宗教上の理由などの例外はありますが。)予防接種をやる、やらないは権利としてありますが、やらない場合はコミュニティには参加させないよという考え方です。

例えば学校などがそうです。そのためアメリカに留学する場合には、必ず予防接種を受けているかを証明しなければなりません。ワクチンを打っていない場合は、きちんと打たなければ、入学できないのです。さすがに日本でそのようなことをやれば大問題になってしまいますが、それほどアメリカでは、予防接種が重要視されている証とも言えます。

今医療は、予防医療を大切にする方向に舵を切りつつあります。病気に罹って治療するのではなく、病気に罹らないように医者に行く方が、人生にとってよほど生産的でプラスなことです。予防接種は予防医療の中でも、大きなウエイトを占める重要な分野です。お子さんのためにも、しっかりとスケジュールを組んで、きちんと接種してください。

とはいえ、定期もあれば任意もあり、ワクチンの数も多いので、お困りになることも多いと思います。風邪をひいてしまってスケジュール通りにいかないなんていうことは日常茶飯事です。そんな時はお一人で悩まず、お気軽に相談してくださいね。

 

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予防医療:予防接種における集団免疫という考え方 その1

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みなさんは「集団免疫」という言葉をご存知でしょうか?集団免疫とは、予防接種により多くの人が病気に対する免疫を持つことで、その病気自体が広がるのを防ぐ間接的な予防効果のことを言います。

例えば子供に対する予防接種をきちんと行うことで、子供の感染率が下がり感染者が減る。それによりその病気に対し免疫を持っていない人が感染者と接触する機会が減り、社会全体での感染率が下がるというようなことです。

つい最近もインフルエンザの集団免疫についての記事が話題になりました。かつて日本でインフルエンザの集団接種が義務付けられていた時期には、集団免疫が獲得できていたため、ワクチンを打った子供達だけではなく、高齢者のインフルエンザによる死亡率が低かった。

しかし、団接種をやめてからは、子供の感染率が上がって学級閉鎖が増えるとともに、高齢者のインフルエンザ由来の死亡率も上がっていったという調査結果があるという記事です。

実はこの集団接種が取り止められた時期には、予防接種で後遺症が残ったなどの事案が相次ぎ、国に責任を問う訴訟が頻繁に起きていました。その中で、群馬県前橋市がインフルエンザワクチンの有用性を検証し、これを否定した、通称「前橋レポート」というものを出しました。

現在ではそのデータの取り方自体にかなり問題があったことが分かっていますが、これに訴訟沙汰を避けたい国や日本全国の自治体が乗ってしまった形で、インフルエンザワクチンの集団免疫を止める自治体が増え、接種率がどんどん下がっていってしまったのです。

今では一時期に比べるとインフルエンザの予防接種率はかなり上がっています。(特に13歳以下の幼児。)しかし、集団免疫を獲得できる水準にあるかといえば、まだまだだと言わざるをえません。それはワクチンの有用性がきちんと伝わっていなかったり、今シーズンのようにワクチンの数が足りずに、受けたくても受けられないといった問題が起こっていることも大きな原因となっていることでしょう。これは行政も含めた医療界全体として、大いに反省すべきことだと思います。

集団免疫は、ヒトからヒトに伝染る全ての感染症に効果があります。特に幼児や高齢者のような体力・免疫的に弱い層の人たちの罹患率を下げ、感染症による重篤な症状や死亡率を大きく下げることができます。予防接種はお子さんや自分自身の健康を守るだけではなく、他のたくさんの命を守る可能性があることを、頭の隅にでも少しでも置いておいて頂けたら幸いです。

 

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