ウイルスと薬 その2[内科]

ウイルスと薬についてのお話の続きです。今回はウイルスとワクチンについて書いてみます。

ウイルスは増殖するとき、宿主の細胞増殖の機能を利用して、自分の遺伝子であるRNAをどんどんコピーしていきます。この時、約3%の割合で何らかの変異があると言われています。ウイルス感染症では、体内に何百万個ものウイルスがいる状態になります。わずか3%の変異率でも、母数が多いので、変異したウイルスが登場する可能性が非常に高いのです。さらに多くの人に感染が広がればなおさらです。このようにウイルスはめまぐるしく変異を繰り返すため、ワクチンができても有効な効果を得にくい場合があるのです。

また、報道番組やワイドショーなどでは、抗体ができていれば、コロナウイルスに罹りにくい、症状が出ないというような論調もありますが、これは正しくありません。

新型コロナウイルスの感染では、ウイルス感染が引き金となって自己免疫系が自分の血管や臓器を攻撃することによって、血管系の疾患や多臓器不全などの重い症状が起こるということが分かってきています。この場合、むしろ抗体がある方が、症状が重篤化する可能性があります。(サイトカインストーム、ADE。)

例えばデング熱は、4つの型があり、ある型に感染し抗体ができると、次に別の型に感染した場合、重篤化する可能性が高いことが分かっています。またネココロナウイルスでは、ウイルスに抗体をもった猫が、同じウイルスに感染すると重篤化することがあるそうです。

実は単純に「接種したときに抗体を作る」だけのワクチンであれば簡単に作れます。不活化や弱毒化したウイルスを体内に入れれば抗体自体はできるからです。ただし、その抗体が正しくウイルスの抑制に働くかどうかは、きちんと検証を積み重ねなければ分からないのです。

同じくコロナウイルスが原因のSARS、MERSでは、ワクチンはできていません。上に書いた変異や抗体・免疫の問題で、有効なワクチンが作れなかったのです。ウイルスに対するワクチンの開発は、とても難しいのです。

アメリカでは早ければ年内にワクチンが接種できるという報道もありましたが、これがどこまで有効なのかは、実際に接種してみないと分からない部分がかなりあると思います。

しばらくはこのウイルスとうまく付き合いながら、感染を押しとどめていくしかありません。3密を避ける、手洗いをする、マスクを上手に使うなどの対策をきちんととって、なるべく感染しない、させないようにしていきましょう。

所沢市の小児科・内科・アレルギー科・糖尿病内科 はらこどもクリニック

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