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HPV9価ワクチンについて【小児科】

3月4日は、国際HPV啓発デーです。

HPVとはヒトパピローマウイルスの略です。HPVは主に性接触によって感染が広がり、感染するとイボのような腫瘍ができます。中でも子宮頸部に腫瘍ができやすく、それが悪性になると子宮頸がんになります。子宮頸がんのほとんどは、HPV感染によるものだと考えられています。

ワクチン接種によって、そのリスクを大幅に軽減することができるのですが、日本では定期接種にもかかわらず、長い間、積極的勧奨が控えられていたため、接種率が非常に低く、子宮頸がんで亡くなる女性は年間約3000人にのぼると言われています。

HPVには型が15タイプあり、ワクチンはそのうちハイリスクな型をカバーするものです。これまでの2価、4価のワクチンで60~70%程度をカバーできていましたが、9価ワクチンによってさらにカバーできる型が増えました。

9価ワクチンは既に世界ではスタンダードで、日本では導入が非常に遅れてしまっています。

今後は定期接種において9価ワクチンが選択できるようになります。定期接種のため、対象年齢の女子(小学校6年~高校1年相当の女子)については、接種費用が全額公費負担となります。

また上にも書いた積極的勧奨が控えられていた時期に対象年齢だったため、接種を受けられていない方については、キャッチアップ接種が実施される予定です。市町村によって公費助成の制度が異なる可能性がありますので、お住いの自治体のWEBサイトなどで確認してみてください。

またHPVワクチンは、本来、女性だけではなく男性も接種するべきワクチンです。男性が接種しておけば、将来的にパートナーとなる女性のリスクを減らすことができますし、男性自身もHPVによる病気を防ぐことができるからです。

陰茎にイボができたり、オーラルセックスによって喉に影響が出る場合もあります。悪性の場合は、陰茎がん、肛門がん、喉頭がんなどのがんになる場合もあるのです。

男性も定期接種の対象になっている国は数多く、オーストラリアでは子宮頸がんは希少がんと同等の数に減ってきており、2028年頃には、子宮頸がんという病気自体がゼロになるのではないかと予想されています。

ちなみに日本では、このペースでいくと子宮頸がんの撲滅は2260年頃になると推定されています。今後は男子への定期接種かも実現してもらいたいと強く願います。

子宮頸がんはワクチンで防ぐことのできる数少ないがんです。定期接種の対象年齢、そしてキャッチアップ世代で接種をしていない方、ご自身の命を守るために、是非接種をしていただきたいと思います。

所沢市の小児科・内科・アレルギー科・糖尿病内科 はらこどもクリニック
〒359-1141 埼玉県所沢市小手指町2-1379

HPVワクチンの積極的推奨が再開されることになりました【小児科】

先日、2013年以降停止されていたHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの積極的推奨が再開されることが発表されました。まだ詳細は出ておりませんが、2022年度からではないかと思われます。

HPVワクチンは女子の定期接種(行政からの補助が出て接種費用は無料)となっており、小学校6年生~高校1年生にあたる年齢を対象に、全部で3回の接種を行います。

積極的推奨が控えられていた空白の8年の世代への救済措置として、無料で接種できるなどの保障が設けられる予定です。実費で既に接種している方については、どうなるか確定しておりません。

最近では地道な啓蒙活動の拡がりもあり、はらこどもクリニックの患者さんからもHPVワクチンに関する質問をよくいただくようになりました。よく質問されることについても、少しご紹介できればと思います。

まずこのワクチンは、HPV(ヒトパピローマウイルス)感染症を防ぐためのもので、その中で最も重要なのが「子宮頸がん」の発病を予防するということです。子宮頸がんは、HPV感染によって起こることがはっきりと分かっており、予防接種をすることで大きく発病を減らすことができます。

現在、定期接種では2価のサーバリックスと4価のガーダシルがありますが、そのどちらも約70%の子宮頸がんを防ぐことができると言われています。

なぜ接種の年代が思春期にあわせてたような形で設定されているかと言いますと、HPVは基本的に性交渉で感染するため、性交渉を行う前に予防接種をしておく必要があるからです。

感染後に接種した場合の効果は余り良く分かっておらず、感染しても早いうちにワクチンを接種すれば効果があるという説とそうではないという説がぶつかっている状態です。そのため空白の8年の世代へも保障があると書きましたが、既に大人になって性交渉をしている場合は、効果はあるのかどうか判断が難しい状況になっています。

また約90%の子宮頸がんを予防する効果があるといわれている9価のシルガードというワクチンも認可されていますが、こちらは現在任意接種のみの扱いになります。2023年度には、こちらも定期接種化がされそうではあるのですが、まだどうなるか分かりません。HPVワクチンは全部で3回接種の必要性があるため、3回目接種時に対象年齢から外れてしまう方は、9価ワクチンの認可を待たずに接種してしまった方が良いと思われます。

HPVワクチンは不活化ワクチンのため、接種に関する制限はほとんどありません。同時接種も可能なので、インフルエンザワクチンのついでに接種ということも可能です。

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HPVワクチンの重要性と安全性 その2[小児科]

前回に引き続きHPVワクチンのお話です。

過去、HPVワクチンが原因とされる失神やけいれんが取り沙汰され、積極的な接種が控えられてしまったわけですが、その後の調査でワクチンに問題はなく、これらの症状はワクチンとの因果関係がないことが分かっています。名古屋で因果関係の有無を調べた大規模な調査(通称:名古屋スタディ)でも、ワクチンを接種した人と接種していない人の間で、有為な差は出ないことが分かっています。

当時はマスメディアが、科学的根拠やエビデンスなしにセンセーショナルに報じたことで、世間に漠然とした恐怖が広がってしまいました。しかし、安全なワクチンをイメージだけで危険ととらえ、実際に死の危険性がある子宮頸がんに罹患してしまっては本末転倒です。

ちなみにHPVワクチンは粘性が強めのため、太い針で接種することが多いワクチンなのです。そのため痛みも強めのため、失神は注射そのものに対するショック反応が大きいことが分かっています。特に接種年齢が思春期真っ只中にあるため、精神的なストレスが身体に及ぼす影響も大きいのでしょう。アメリカではHPVワクチン接種の際に失神するケースがクローズアップされたことがありましたが、日本では件数は少ないです。

このようなことが分かってきていますから、現在では接種の際には心理的な不安やストレスをきちんとケアして接種することが求められています。お子さんだけではなく、親御さんも含め、HPVワクチン接種に不安のある方に対しては、きちんと安全性や効果について説明させていただきます。

HPVワクチンを怖がらず、定期接種の期間内にきちんと接種してください。

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HPVワクチンの重要性と安全性 その1[小児科]

定期接種に指定されているワクチンながらも、厚労省が積極的な推奨をしないという方針を打ち出したため、大きく接種率が下がってしまっているのが「HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」です。

HPVは、子宮頸がんの原因となるウイルスであり、HPVワクチンを接種することで、子宮頸がんのリスクを大幅に下げることが出来ます。子宮頸がんはワクチンで防げる数少ないがんなのです。

日本では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんに罹患し、約3千人が死亡しています。またこれまでは40~50代が罹患のピークだったものが、20~30代の若い女性にも増えてきており、患者数、死亡者数も増加傾向にあります。接種率の低下が、如実に悪い方向へ出てしまっているのです。

HPVは元々人間の体にはいないウイルスで、基本的に性交渉で感染することが多いです。最初の性交渉で感染することがあるため、その前にワクチンを接種しておく必要があります。

現在日本で流通しているワクチンは4価ですが、既に世界の流れは9価ワクチンであり、日本でも先日9価の製造承認が下りていますので、もうしばらくすれば9価ワクチンが出回るのではないかと思っています。

日本では定期接種は女性のみで、12歳から16歳の3月31日までが定期接種の期間に指定されています。もしまだ期間に猶予があるようでしたら、少し待って9価を接種した方が良いかもしれません。

ちなみにアメリカでは、HPVワクチンは女性だけではなく、男性も定期接種になっています。男性も接種しておけば、それだけ女性への感染リスクも下がるわけですから、本来は男性も接種すべきです。そもそもHPVは子宮頸がんの原因となりますが、それ以外の外性器周辺にできる疾患も引き起こします。

代表的なものに「尖圭コンジローマ」がありますし、陰茎がん、オーラルセックスをした場合は、咽頭がんの原因にもなります。

感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、感染してしまった後は取り除くことは難しいため、基本的にはワクチンで予防するしかないウイルスです。(※ただし感染しても自然と体内から排出されることもあるため、必ずしもすべての人に、ウイルスが体内にとどまり続けるわけではありません。)

長くなってしまったのでこのへんで。次回はHPVワクチンの安全性について書いてみたいと思います。

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