3月に沖縄で「はしか」の感染者が報告されてから、全国にその感染が広がっています。ニュースなどでも報道されており、心配されている親御さんも多いのではないでしょうか。ワクチンができてからは、日本では、「はしか」は余り見られない病気となっています。今回は改めて「はしか」について、書いてみたいと思います。
「はしか」は正式には「麻疹」といわれる感染症です。大体4~6月にかけて流行し、感染すると90%以上の割合で症状が出ます。潜伏期は10~11日と言われています。症状としては、最初に発熱が始まり、2日目以降、鼻水や咳が出てきます。頬の粘膜に「コプリック斑」といわれる発疹が現れるのが特徴ですが、感染者全てに出るわけではないので注意が必要です。コプリック斑が出ない場合、症状が風邪に似ており、初期では診断が難しい病気でもあります。特に若い医師では、麻疹(はしか)を診たことがないという人もおり、判断が難しくなる場合もあるでしょう。感染すると、喉の粘膜が非常に汚くなるのが特徴であり、はらこどもクリニックでは、そういった部分も含めて診断しています。
3人に1人は重篤化し、特に子供が感染した場合、気道が大人よりも狭いため、呼吸困難など症状が重くなりやすいです。1000人に1~3人は死亡するという、致命率の高い感染症でもあります。
空気感染のため感染力は非常に強く、有効な予防法はワクチン以外にはありません。感染の強さを示す数値で比べてみると、インフルエンザ:2~3、水痘(水ぼうそう):8~10、麻疹(はしか):16~21となっており、その感染力の強さを実感して頂けると思います。
江戸時代には子供が麻疹(はしか)に罹って生き残れるかどうかでその運命が決まったことから、「命さだめ」と言われていたそうです。また、将軍の子供も麻疹(はしか)に罹ったという記録が残されています。庶民から発症した麻疹が、感染を繰り返し、人ごみから隔離されているはずの将軍家まで届く、すさまじい感染力だと言えますね。
さて、ここまで麻疹(はしか)のおそろしい側面を紹介してきましたが、今回のブログのタイトルにもあるように、今回の流行に関しては、少し冷静になる必要があると考えています。
まず、麻疹(はしか)についてはワクチンによる予防が、唯一にして最大の予防になります。現在では麻疹(はしか)については、基本的に風疹との混合ワクチンであるMRワクチンになりますが、1回接種で95%以上の人に抗体ができ、2回接種することで残りの5%の人にも抗体がつくと言われています。ワクチンを1回でも打っておけば、仮に感染して症状が出たとしても、症状は軽くなります。MRワクチンは定期接種になっていますから、きちんと接種しているお子さんについては、それほど心配する必要はありません。
また、一度感染すると抗体を獲得し、その抗体は一生続くと言われています。一部テレビ番組等で、「抵抗力の弱い高齢者は、ワクチン接種を受けた方が良い」という報道があったそうですが、それは全くデタラメといっていいでしょう。きちんとした麻疹ワクチンが流通したのが、昭和40年代の後半ですので、それより前の世代、現在46歳以上の人は、ほぼ麻疹(はしか)に罹患している世代です。昔は麻疹(はしか)の流行期となれば大変なもので、毎日のように1日何十人という麻疹患者さんを診たものです。ですので、高齢者はほぼ麻疹の抗体をもっていますので、大丈夫です。怖いのは、こういった報道がされることでパニックになってしまい、ワクチンの必要のない世代が、我先にと接種を求めることです。それによって本来ワクチンを打たなくてはならない子供たちにワクチンが行き渡らなくなることが、最大の問題です。
はらこどもクリニックにも、報道を見てワクチン接種を希望する高齢者の方が来院されましたが、このようなことをしっかりと説明し、納得して接種なしで帰っていただいたこともあります。
長くなってしまったので今回はこのへんで。次回は、今年、麻疹(はしか)が大流行しているように見える理由を書いてみたいと思います。
また、はしかについては、原院長のFacebookにも色々な情報を載せていますので、そちらも是非ご覧になってみてください。
所沢市の小児科 はらこどもクリニック
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