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新型コロナウイルスの治療薬の現状【内科】

新型コロナウイルスが5類に変更されるまで、あと1ヵ月程度となりました。マスクについても個人の判断ということになり、徐々に日常をコロナ前に戻していくという流れが強くなっています。
その中で新型コロナの治療薬についての現状をご紹介してみたいと思います。

現在日本でスタンダードに使われているのが「ラゲブリオ」と「パキロビッド」の2つです。

どちらもウイルスの増殖を抑える経口薬で、原則成人(妊婦さんを除く)かつ、高齢者や内臓疾患など重症化リスク因子をもつ、軽症~中等症の患者さんが対象です。

どちらも重症化リスクを下げる効果が認められていますが、ラゲブリオはそれほど大きな効果はなく、パキロビッドの方が、効果は高いと言われています。ただしパキロビッドは、他の薬との併用禁忌が多く、慢性的な疾患を抱え服薬している場合には使用できないケースもあります。

また塩野義製薬のゾコーバも認可されましたが、こちらは重症化リスクを下げる効果は認められておらず、発症日数を1日減らすという程度の効果しかない(むしろそれすらも怪しい)薬なので、はらこどもクリニックでは、積極的に使用することはありません。

どの薬もかなり高価なため、5類変更で保険治療になった場合、3割負担でも薬代はかなり高額になります。特にゾコーバとパキロビッドは高いので、どうなっていくのか読めない状況です。

またどの薬も12歳以下には治験が行われておらず、使用することはできません。(12歳以下には唯一レムデシベルが使用できますが、主に重症患者向けの点滴薬のため、クリニックでの使用は現実的ではありません。)

総じて「治療」という意味では、ゲームチェンジャー的な薬は残念ながらまだありません。ワクチンを定期的に接種しつつ、できる範囲で、感染予防対策を続けていただければと思います。

所沢市の小児科・内科・アレルギー科・糖尿病内科 はらこどもクリニック
〒359-1141 埼玉県所沢市小手指町2-1379

新型コロナ2類→5類、何が変わるのか?

今までは2類相当とされていた新型コロナ感染症が、インフルエンザなどと同じ5類相当に変更されそうです。そうなった時、患者さんにとって何が変わるのか? まず、はらこどもクリニックの場合を色々と書いてみたいと思います。

一番大きな違いとしては、診療費用が無料ではなくなります。5類になると健康保険診療の対象になりますので、高校1年生以上は3割負担となります。中学生以下のお子さんについては、助成があるので無料のままです。

また、場合によっては検査をこれまでのように積極的にはできなくなる可能性はあります。保険診療の場合、診察内容にチェックがかかり、制限が出てくる可能性があるからです。
例えば、PCR、抗原検査の両方は通しませんというようなケースは出てくるかもしれません。自治体によってバラつきもあるため、これは実際に運用段階になってみないと分かりません。

はらこどもクリニックでは、きちんとゾ-ニングされた発熱外来もあり、これまでも新型コロナの診察をしてきましたので、それ以外で大きく変わる点は無いかと思われます。

次に、これまで新型コロナを診察してこなかった医療機関の場合です。5類になることで、どこでも診察できるようになると言われていますが、現実にはそうならない可能性が高いでしょう。感染症患者さんをゾーニングして隔離できない医療機関では、既存の患者さんに感染するリスクがある以上は受け入れることは難しいでしょう。

新潟県では、5類移行後の方向性として、「全ての医療機関で新型コロナウイルスへの感染やその疑いを理由に入院・受診を断らない」という方向性が県主導で確認されたようです。
このように行政側が主体的に行動を起こせば変わるかもしれませんが、どこまで強制力を持たせられるのか、もし無理やり診察させてクラスターが発生した場合はどうするのかなど、実際の運用については難しいことも多いと思われます。

またこれまでの2類相当では、発熱外来の診療単価が高く設定されていました。新型コロナ以外の患者さんを診ることがしにくくなる、隔離ゾーン・減圧室・感染を防ぐ防護服などの設備・装備が必要であるなど、他の感染症よりも診察に手間やお金がかかってしまうからです。

今後は診療単価が下がるため、これまで新型コロナを診てきた医療機関の中には、診察をやめるところが出てくるかもしれません。

5類になると感染者や濃厚接触者の隔離はなくなります。これまで厳しく制限してきたものを一気に無くしてしまうのか、条件付きになるのか、国の方向性をみていく必要性があるでしょう。

そしてもうひとつ重要なのが、学校においての扱いです。学校では感染を放置すると流行が広まってしまう可能性がある感染症について、学校感染症として、出席停止の期間を設けています。例えばインフルエンザであれば、発症後5日かつ解熱後2日もしくは3日経過するまでとされています。

感染をある程度おさめつつ、社会を正常化していくには、様々な問題が出てくると思われます。2類、5類という括りにこだわらず、柔軟な対処ができるようになってほしいと願います。

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発熱した時、家庭でできる処置【内科・小児科】

新型コロナの流行で、発熱しても場合によっては医療機関ですぐに診察してもらえないような状況も出ています。そこで、発熱した時、家庭でできる処置について少し書いてみたいと思います。

まず熱があっても冷やすのはNGです。熱が出ている時の人間の身体の反応を見てみましょう。

ウイルスや細菌などの異物が体内に入ると、その反応として身体はサイトカインを出します。サイトカインは脳の体温中枢に作用し、体温のセットポイントを上げます。平熱が37℃であれば39℃になるように温度設定を上げるイメージですね。そうすると、身体はその体温になるように働きます。例えば、身体を震わせて体温を上げるといった働きです。

なぜこのような働きになるかというと、基本的にウイルスやバクテリアなどは、温度が高い方が増殖しにくい、かつ体温を上げることで免疫の働きが高くなるからだと言われています。体温を高く保っておいた方が、体の中に入った異物を退治しやすいのです。

このように脳と身体が体温をあげようとしている時に体を冷やせば、身体はさらに熱を出す方に働くので、逆効果になります。

熱が高くなってつらい場合は、身体を冷やすのではなく解熱剤を使いましょう。解熱剤は脳に作用し、体温のセットポイント自体を下げる効果があります。セットポイントが下がれば、体温を上げようとする働きは弱くなるので、熱が下がるという仕組みです。

さらにサイトカインは最低2つの働きを持っており、発熱サイトカインは免疫を高める効果も持っています。解熱剤は、体温を下げる働きをしても、免疫を抑える効果はないので、解熱剤を使用しても問題ないのです。

また体温が1℃上がるだけでカロリー消費は約12%大きくなると言われています。また汗をかくことで水分が失われるので、発熱時にはしっかりとカロリーと水分を摂るようにしてください。汗をかいたら衣類を着替えるのも大切です。

ちなみに風邪という身近で不思議な病気について書かれた「かぜの科学」という本があります。風邪について勉強になるだけではなく、雑学的な読み物としてもとても面白いので、興味のある方は是非読んでみてください。

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HPV9価ワクチンについて【小児科】

3月4日は、国際HPV啓発デーです。

HPVとはヒトパピローマウイルスの略です。HPVは主に性接触によって感染が広がり、感染するとイボのような腫瘍ができます。中でも子宮頸部に腫瘍ができやすく、それが悪性になると子宮頸がんになります。子宮頸がんのほとんどは、HPV感染によるものだと考えられています。

ワクチン接種によって、そのリスクを大幅に軽減することができるのですが、日本では定期接種にもかかわらず、長い間、積極的勧奨が控えられていたため、接種率が非常に低く、子宮頸がんで亡くなる女性は年間約3000人にのぼると言われています。

HPVには型が15タイプあり、ワクチンはそのうちハイリスクな型をカバーするものです。これまでの2価、4価のワクチンで60~70%程度をカバーできていましたが、9価ワクチンによってさらにカバーできる型が増えました。

9価ワクチンは既に世界ではスタンダードで、日本では導入が非常に遅れてしまっています。

今後は定期接種において9価ワクチンが選択できるようになります。定期接種のため、対象年齢の女子(小学校6年~高校1年相当の女子)については、接種費用が全額公費負担となります。

また上にも書いた積極的勧奨が控えられていた時期に対象年齢だったため、接種を受けられていない方については、キャッチアップ接種が実施される予定です。市町村によって公費助成の制度が異なる可能性がありますので、お住いの自治体のWEBサイトなどで確認してみてください。

またHPVワクチンは、本来、女性だけではなく男性も接種するべきワクチンです。男性が接種しておけば、将来的にパートナーとなる女性のリスクを減らすことができますし、男性自身もHPVによる病気を防ぐことができるからです。

陰茎にイボができたり、オーラルセックスによって喉に影響が出る場合もあります。悪性の場合は、陰茎がん、肛門がん、喉頭がんなどのがんになる場合もあるのです。

男性も定期接種の対象になっている国は数多く、オーストラリアでは子宮頸がんは希少がんと同等の数に減ってきており、2028年頃には、子宮頸がんという病気自体がゼロになるのではないかと予想されています。

ちなみに日本では、このペースでいくと子宮頸がんの撲滅は2260年頃になると推定されています。今後は男子への定期接種かも実現してもらいたいと強く願います。

子宮頸がんはワクチンで防ぐことのできる数少ないがんです。定期接種の対象年齢、そしてキャッチアップ世代で接種をしていない方、ご自身の命を守るために、是非接種をしていただきたいと思います。

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ウイルス性の急性脳症とは?【内科・小児科】

新型コロナウイルスのオミクロン株が広まった結果、それまではなかった子どもの死亡事例が出てきました。今年の4月には、栃木県で基礎疾患のない8歳の女の子が感染後、急性脳症で死亡したというケースがありました。基礎疾患はなく、ワクチンは未接種だったとのことです。

では急性脳症とはどのような症状なのでしょうか?

脳症とは、脳の浮腫(ふしゅ)=むくみや腫れによって、意識障害やけいれん、呼吸麻痺、運動機能の麻痺などが起こります。症状の悪化は早く、特に急激に症状が進行するケースを急性脳症と言います。

脳にダメージがあるため、命は助かっても、何らかの障害が残るケースもあります。例えば、同じく上述のケースと同じく栃木県で、命こそ助かったものの、5歳未満の女の子が急性脳症で重篤な状態になり、体に麻痺が残ったという事例もあります。

脳症の原因には様々なものがありますが、その中でも新型コロナに限らず、ウイルス感染によって起こり得るのがウイルス性の脳症です。ただし、ウイルスが脳に直接感染して炎症を引き起こすものは脳炎と言います。脳症の場合、必ずしも脳が炎症を起こしているわけではなく、脳を調べても、ウイルスが出てこない場合もあります。

脳症の場合、ウイルスそのものが原因なのか、サイトカインなど自己免疫系の異常が原因なのか、はたまた他の原因があるのか、はっきりとは分からないことが多いのです。

例えば、日本脳炎の場合は、脳から病原体が見つかりますが、インフルエンザ脳症の場合は、脳の中からインフルエンザウイルスは見つかりません。

脳炎と脳症は症状からは見分けがつきません。症状は同じですが、脳症の場合は、それを引き起こす直接的な要因が分からないことも多いので、治療がより難しくなります。

新型コロナの場合、今後解剖例が増えてこないと、どのような原因でどんなメカニズムで脳症を引き起こすのかがはっきりと分かってこないでしょう。

ワクチン接種によって、直接的に、急性脳症を予防できるというわけではありませんが、感染のリスクを下げ、重篤化のリスクを下げることで結果として、急性脳症になるリスクを減らすことができます。

お子さんのワクチン接種をしていない方は、早いうちに接種をお願いできれば幸いです。

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発熱外来からのお知らせ

7月に入ってから、急激に新型コロナの感染状況が悪化しています。はらこどもクリニックでも6月の終わり頃には、陽性者数がゼロになった週もありましたから、わずかな期間で猛烈に感染者が増えたことになります。

はらこどもクリニックの発熱外来にも患者さんがたくさん来られており、1日に対応できるキャパシティーを超えてしまっている状態です。朝の時点で予約の電話が殺到し、短時間でその日の予約がいっぱいになってしまっています。

また厄介なのは、新型コロナだけではなく、R Sウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスなど、多くの種類のウイルス性の風邪のような症状が出ており、外来での診察が複雑になり、患者さん一人一人への診察時間がかかっています。

場合によっては、診察をお断りせざるを得ない状況も発生しています。ご迷惑をおかけしますが、ご了承いただけますと幸いです。

感染拡大の最大の理由は、新しい変異株(BA.4/5)に置き換わったことです。現在アメリカではまた別の感染力の強い亜種が出てきているので、株の置き換わりごとに、感染者数が増加していく可能性は高いでしょう。

オミクロン株は、症状自体は軽いことが多いですが、問題になるのは後遺症です。頭痛・倦怠感・味覚障害などの他にも、コロナ罹患後は脳卒中、脳梗塞、心筋梗塞など死に直結する病気のリスクが上がるというデータも出てきています。

たとえ軽症でも後遺症が出るケースは珍しくありません。体からウイルスが無くなった後、回復期のリスクが高いのです。

特に若い人の中には、オミクロンは症状が軽いということからワクチンの3回目接種をしていない人も多いようです。またお子さんの接種については、あまり進んでいるとはいいがたい状況です。

現状の新型コロナについては、ワクチン接種をすることしか大きな対策はありません。株が置き換わることで感染自体を防ぐ効果は下がってはいますが、重症化予防には大きな効果があります。

またワクチンで後遺症のリスクを抑えられるというデータも出ていますので、まだ3回の接種をしていない方は、是非接種をしてください。

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ウイルスが原因の湿疹【小児科】

湿疹には様々な原因がありますが、ウイルスが原因の場合も多くあります。エンテロウイルスやアデノウイルスなど、風邪の症状がでるようなウイルスは、湿疹の症状を引き起こす可能性があり、頻度はかなり高いです。

ウイルスが原因の風邪に特効薬がないように、ウイルスが原因の湿疹にも特効薬はありません。ウイルスを殺すような治療ではなく、炎症やかゆみなどを抑える対症療法となります。多くは弱めのステロイド軟こうやかゆみ止めの処方となります。

中でもジアノッティ症候群と呼ばれる湿疹症状は、幼児にはかなりポピュラーです。手足の下の方から発疹が出始め、徐々に上に上がり、最後は頬にも発疹が出てきます。赤い発疹が全身に見られるためひどく見えますが、症状自体は軽く、ちょっとしたかゆみが出る程度です。

元々B型肝炎ウイルスが原因となるジアノッティ病という皮膚疾患があり、それに見た目が似ているためつけられた疾患名です。しかし、B型肝炎ワクチンが定期接種となっている現在では、ジアノッティ病自体はほとんど見られませんので、このような湿疹症状が出た場合は、ジアノッティ症候群の可能性が高くなります。

冬場は乾燥や衣類の擦れなどで湿疹が出ることも多いため、親御さんでは判断が難しくなります。放っておくと症状が長引く場合があるので、保湿クリームなどを塗っても、なかなか改善しないという場合は、一度小児科の医師に相談してみると良いでしょう。

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この季節の小児の発熱について【小児科】

感染症というと新型コロナウイルスばかりに注目がいきがちですが、他の感染症はどうなっているのでしょうか。

まず感染症自体が新型コロナウイルスへの感染対策の徹底によって大幅に減少しています。感染症は大体流行する時期が決まっているのですが、感染数自体が少なく、季節性がなくなっています。

マスクや手洗いがきちんとできる年齢のお子さんたちについては、引き続き感染対策を行っていただくことで、感染症の拡大は防げると思われます。

逆にマスクができないくらいの乳幼児については、これからの季節ではライノウイルス感染症が厄介な病気となります。とにかく型が多く、変異も頻繁に起こるので、免疫が作用しにくく、何回もかかることがあります。

発熱はあってもそれほど高くなることはなく、咳や鼻水などの呼吸器系の症状が多いことが特徴です。特効薬的な薬はありませんので、対症療法が中心となります。

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所沢市周辺でのRSウイルスの流行状況【内科・小児科】

感染症というと新型コロナウイルスの話題ばかりになっていますが、7月頃から全国的にRSウイルス感染症が猛威を振るっていますRSウイルスは従来秋から冬にかけて流行するウイルスでしたが、近年では夏から流行が始まるようになっています。

所沢市でも流行が広がっていて、緊急入院を要する患者さんも出てきています。

3歳までにはほぼ100%の乳幼児が感染すると言われ、初期症状としては鼻水、ひどくなると咳と発熱が長く続くことが特徴です。4~5日目が一番症状が悪くなり、咳がとれるまでに2~3週間かかる場合もあります。

基本的には命にかかわるような症状悪化はないのですが、0歳児が感染すると非常に重い症状になることがあります。悪化した場合入院して酸素を入れる必要があるので、医師の判断で酸素吸入ができる医療機関に搬送することになります。

RSウイルスには特効薬的な薬はなく、エビデンスがある有為な治療法もありません。また感染しても免疫ができにくく、何度も感染するのが特徴です。感染しやすい2歳まではマスク着用はリスクがありますので、感染しないよう手洗いや消毒を徹底することが重要です。

昨年は新型コロナウイルス対策を徹底していたことから、感染が防がれたと思われ、陽性者はほとんど出ませんでした。しかし今年はその分流行が始まった時期が早く、これから本格的なシーズンを迎えることを考えると注意が必要です。

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mRNAワクチンの有効性が高い理由【内科】

 

現在、世界中で様々な新型コロナウイルスのワクチンが出回っています。日本で使用されているのはファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンです。この2つのワクチンは90%を超える高い有効率があり、他のワクチンに比べても、非常に有効性が高いことが分かっています。

ウイルスベクターワクチンであるアストラゼネカのワクチンは、有効率約75%、またシノバックの不活化ワクチンは50%程度という調査結果もあるようです。

こうして見ると、シノバックのワクチンは、効果が低いように思われますが、そもそも不活化ワクチン自体の有効率はそれほど高くありません。例えば私たちが毎年のように接種するインフルエンザワクチンは不活化ワクチンで、有効率は50%程度だと言われています。

有効率とは、ワクチンを接種しなかった場合と接種した場合で、どのくらい発症者が減少したかの数字です。例えば100人の人がいてワクチンを接種しなかった場合、50人の人が感染症を発症したとします。対してワクチンを接種した場合、発症者は5人に減少しました。
発症者の数は50人→5人になり45人の減少です。ワクチンを接種していない時の発症人数を100%とし、割合に直すと発症者が100%→10%になり、90%減少したことになります。この減少の割合を有効率と言います。有効率50%の場合は、ワクチンを接種した場合でも100人中25人の人が発症する計算になります。

新型コロナのワクチンでmRNAワクチンの成績が良いのは、液性免疫だけではなく、細胞性免疫を誘導するからと考えられています。
液性免疫はウイルスのスパイクタンパクに対応する抗体を作り、ウイルスのスパイクを無効化し、細胞に取り付きにくくする免疫反応です。
対して細胞性免疫は、ヘルパーT細胞とキラーT細胞によって、ウイルスに感染した細胞をウイルスごと殺してしまうようなイメージです。液性免疫が反応の性質上、変異株に対して効果が低いのに比べ、細胞性免疫は変異株にも高い効果を示すことが分かってきています。

ウイルスベクターワクチンも細胞性免疫を誘導しますが、ベクターに対する免疫反応が起こるため効率が悪くなっている可能性があります。
不活化については、液性免疫のみの誘導になり、抗体増強反応を起こす可能性もあることから、今回の新型コロナウイルスに対しての効果は厳しいものがありそうです。また、ウイルスを無害化する時にタンパク質が変質しているほか、本来抗体を作るために必要なタンパク以外の、余計なタンパクも含まれているため、どうしても効果は弱くなってしまいます。

ただしmRNAワクチンは、RNAが物質として非常にもろいため、取り扱いに難があります。アストラゼネカのワクチンは、ファイザーやモデルナのワクチンに比べれば取り扱いは簡単で、1回接種で良いというメリットもあります。

また今後は日本のシオノギの組み換えタンパクワクチンも出てくる予定です。組み換えタンパクワクチンは既にB型肝炎ワクチンなどで実用化されており、取り扱いも難しくなく、コストも安価です。

このように有効率だけではなく、ワクチンによって様々なメリット・デメリットがありますので、流行の状況を見ながら、適切にワクチン接種を進めていくべきでしょう。

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