月別アーカイブ: 2018年2月

子供の花粉症

720961

冬季オリンピックももう少しで終わりますね。今年はメダルを獲得した選手も多く、なかなか盛り上がっているようです。とはいえ寒さはまだまだ厳しく、冬は続きそうではありますが、関東では早くもスギ花粉が飛び始めているようです。

花粉症といえば、昔は大人がかかる症状でした。しかし、今ではどんどん若年化が進み、子供でも花粉症の症状を訴えるようになっています。幼稚園児で花粉症になってしまう子も決して珍しくありません。子供の花粉症とはいえ、症状は大人と同じです。くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどが出ます。小さいお子さんは夜寝る時に苦しくなってしまうことも多く、ぐずる子も多く見られます。子供にとっては非常に辛いことです。即効性のある治療法として、大人ですとレーザー治療などもありますし、強い薬を飲むこともできますが、子供の場合は、処方する薬を含めてその対処は限られてしまいます。

また、花粉症に有効な治療法として、アレルゲンを舌の裏に少量落とすことでアレルギーを改善する「免疫舌下療法」という治療法もあります。(大人であれば80%程度の割合で効果があります。)しかし、これは現在12歳以上からできることになっており、小さいお子さんには使えません。

もどかしいようですが、玄関に入る前に服についた花粉を落として、家の中に持ち込まない。洗濯物を外に干さないようにするなど、花粉が部屋の中に入らないように注意をしつつ、症状がひどい場合には、小さいお子さんにも使える抗ヒスタミン剤などのお薬で、症状を和らげる治療をするというのが最善策になります。

これからの季節に鼻水などが出ている場合、それがただの風邪なのか、花粉症なのか診断する必要があります。これらは全く治療法が変わってきますから、安易に自己判断せず、きちんと受診しましょう。

ちなみに年をとってくると花粉症の症状は出にくくなるようです。花粉症はアレルギー反応、つまりアレルゲンに対し体の免疫が過剰に反応してしまうものです。年をとって免疫反応が落ちてくると、症状が弱まるんですね。

 

所沢市の小児科 はらこどもクリニック

〒359-1141 埼玉県所沢市小手指町2-1379
診療時間 午前 8:40〜12:00  午後 15:00〜18:00
受付時間 平日 8:30〜18:00  土曜日 8:30〜12:00
休診日 日曜日 祝日 (年末年始 お盆休みあり)

抗生物質の使いすぎはNG 耐性菌の実例

先日のブログで、日本は「抗生物質大国」だということを書きました。今回はその実例についていくつか書いてみたいと思います。

近年で大きな問題になったのが「マイコプラズマ肺炎」です。もともとマイコプラズマ肺炎に効く抗生物質は一部しかありません。マクロライド系、ニューキノロン系の抗生物質です。しかし、このうちマクロライド系への耐性菌が出てきてしまったことで、この肺炎の治療は非常に難しいものになってしまいました。このマクロライド耐性マイコプラズマの原因は日本の抗生物質の乱用であるということが、WHOで指摘されています。

また、度々入院患者の死亡事例が発生する院内感染の原因菌も、薬剤耐性菌であることが多いのです。院内感染の原因となるのは、ブドウ球菌や緑膿菌がありますが、このうち緑膿菌は、耐性菌になりやすく多剤性耐性菌になりやすいのです。そのため、重大な院内感染の原因菌になる頻度が高いのです。

抗生物質大国のひとつであるインドでは、どんな抗生物質も受け付けない「スーパー耐性菌」が発生し、その対処が問題になっています。今はインド国内に留まっていますが、これだけ世界中でモノやヒトの往来がある中では、いつ世界中に拡散するか分かりません。

日本では、ちょっとした風邪のような症状の時にも、抗生物質を出すようなケースがまだまだ多く見られます。抗生物質の乱用を減らすには、医師だけではなく、患者さんの意識や知識もとても大切になってきます。このブログを読むことで、少しでも抗生物質の問題に興味を持っていただければ幸いです。

 

所沢市の小児科 はらこどもクリニック

〒359-1141 埼玉県所沢市小手指町2-1379
診療時間 午前 8:40〜12:00  午後 15:00〜18:00
受付時間 平日 8:30〜18:00  土曜日 8:30〜12:00
休診日 日曜日 祝日 (年末年始 お盆休みあり)

発熱あれこれ 熱性痙攣

高熱が出た時に起こる症状のひとつに熱性痙攣があります。痙攣が派手な場合は、親御さんもパニックになってしまうことも多く見られます。ただし熱性痙攣自体は、それほど恐ろしいものではありません。仮に熱性痙攣を何回起こしたとしても、それが原因で後遺症が残ったりすることはありません。(熱性痙攣をした子供は、3割~5割程度繰り返すことがあるようです。)

熱の時に使用する座薬には、熱性痙攣を予防するものもありますが、非常に強い薬のため、子供の体の負担を考えると、余り使用はおすすめできないものです。

ただし難しいのは、痙攣が熱性痙攣なのか、それとも他の異常のために起こった痙攣なのかを判断する必要があるということです。痙攣には原因も型もいくつかあります。もし髄膜炎などの重い感染症による痙攣だった場合には、すぐに対処が必要です。痙攣を起こした場合、基本的には、すぐに病院に行ってください。きちんと医師に診察してもらい、何が原因かを調べてもらう必要があります。またその際には、スマホなどで痙攣の様子を撮影しておくと、診察の際に非常に役に立ちます。

ちなみに痙攣が熱性痙攣かどうかを判断するには、痙攣が左右対称かどうかを見るという方法があります。左右対称に痙攣する場合は大丈夫なことが多いのですが、左右非対称に痙攣する場合は、何か重篤な病気の可能性があります。特に目がどちらかに寄っていたりしたら注意が必要です。

また、小さなお子さんの場合は、痙攣の動きが小さく、親御さんが痙攣しているのに気付かない場合があります。例えば、口をぐっと食いしばって緩むのを繰り返していたり、腕をぎゅっとして緩むことを繰り返している場合には痙攣している可能性があります。

お子さんが痙攣を起こした場合には、パニックにならず、なるべく冷静に症状を観察したうえで、きちんと医師の診察を受けてください。

 

所沢市の小児科 はらこどもクリニック

〒359-1141 埼玉県所沢市小手指町2-1379
診療時間 午前 8:40〜12:00  午後 15:00〜18:00
受付時間 平日 8:30〜18:00  土曜日 8:30〜12:00
休診日 日曜日 祝日 (年末年始 お盆休みあり)

抗生物質の使いすぎは、なぜいけないのか? その2

976751

前回に引き続き、抗生物質のお話です。

抗生物質の使いすぎは、耐性菌を生み出すと同時に、抗生物質が効きにくい体を作ってしまう場合があります。人間の体には常在菌と呼ばれるたくさんの菌が生きています。まず抗生物質を使うと、悪い細菌だけではなく、体に良い常在菌も殺してしまうことになります。それにより、体の調子を崩すこともあります。また、常在菌自体が抗生物質の耐性菌になってしまう場合もあります。これの怖いところは、常在菌がもつ薬剤耐性の遺伝子情報を他の菌に伝えることで、他の菌まで耐性菌に変化してしまうことです。もし、体の多くの常在菌が耐性菌になってしまえば、その人は抗生物質が効かない体になってしまう可能性もあるのです。

現在、前回のブログにあげた厚労省の動きなどから、大きな大学病院などでは、抗生物質は一医師の独断では勝手に使えないよう使用管理を行うところも出てきています。しかし、現実には、まだまだ抗生物質の使い過ぎは是正されているとは言えません。開業医の処方のチェックをする機関はありませんし、仮に開業医が抗生物質を処方しすぎたとしても、特に罰則などはないからです。

はらこどもクリニックでは、このような問題から、抗生物質を使わないでも治療が可能な場合には、なるべく抗生物質を使わないようにしてしています。また、もし抗生物質を使う場合でも、世代的に新しい抗生物質である万能的なセフェム系の薬は使わず、なるべく狭い範囲で菌を死滅できるような前世代の抗生物質を使うなどして、耐性菌の発生を防ぐようにしています。例えば、子供がよくかかる感染症に「溶連菌」がありますが、溶連菌はペニシリン感受性が高く良く効くので、ペニシリンを処方するなどしています。こうすればセフェム系への耐性が出来てしまうことはなく、安心だからです。

抗生物質は非常に効果の高い薬です。しかし、特に子供に対し使いすぎてしまうことは、子供たちの将来に大きな影を落としかねません。子供を育てている親御さん方にもそのことを十分に知っていただけたら幸いです。

所沢市の小児科 はらこどもクリニック

〒359-1141 埼玉県所沢市小手指町2-1379
診療時間 午前 8:40〜12:00  午後 15:00〜18:00
受付時間 平日 8:30〜18:00  土曜日 8:30〜12:00
休診日 日曜日 祝日 (年末年始 お盆休みあり)